安井息軒記念館で、令和5年度 冬の企画展『息軒の娘 ~安井息軒の教育論~』が開催されます。
日本画のタッチで描かれた宇宙服姿の女性。異彩を放つこのイラストは、宮崎市在住のイラストレーター池田和宏氏の作品「Astro Girl」です。本企画展では、この異相の女性に、安井息軒の長女「須磨子」のイメージを重ねました。
須磨子という女性は、文政11年(1828年)に現在の宮崎市で生まれ、明治12年(1879年)に東京で亡くなりました。彼女は特に偉業を成したわけではなく、歴史的には「江戸時代の大儒者安井息軒の娘」であり、「幕末の攘夷志士中村貞太郎(北有馬太郎)の妻」であり、「明治漢学の泰斗安井小太郎の母」であるに過ぎません。
ただ面白いことに、彼女の「鴻儒息軒の第一子として生まれ、『安井夫人』(森鴎外/1914年)こと川添佐代が育て上げた女性」というプロフィールが描き出す虚像と、書簡や逸話が伝える実像は大きく乖離しているのです。
須磨子は、江戸時代に生まれ育った女性とは思えないほど非常にユニークな、ある意味、現代の日本人女性以上に現代的なキャラクターの持ち主であり、その人格形成には息軒の教育方針が大きく影響していたようです。本セクションでは、息軒の育児論と女子教育論を紹介します。
「教育論」と銘打ちましたが、息軒には教育に関する専論はありません。したがって息軒の「救急或問」や「時務一隅」や「睡余漫筆」といった著作で教育に言及している箇所や、弟子たちの証言を元に復元するしかありません。
今回は特に、①教育行政の必要性 ②心の教育の重視 ③小学校の設置(ヨコの関係)④主体的な学びの4点に絞ってご紹介します。
息軒本人は袖が擦り切れるほどの猛勉強を重ねたことで知られ、渋沢栄一が「維新頃の儒者で博学という点で息軒に及ぶ者はあまりなかったとの評判である」と評したほどの博識の人でした。しかし、そんな息軒が育てようとしたのは、自分の頭で考えることができて、さらに自分の意見を討論の中で他人にきちんと説明できる人間でした。
また知識偏重の教育では、子どもたちは「驕慢の心」を肥大化させることになると警告し、特に児童教育では、健全な人間関係の構築に重要となる「敬意」と「真摯さ」と「規範遵守」を身につけさせることに注力せよと言います。
息軒の教育論には、現代の教育が直面している課題を解決するヒントがあるように思われます。皆様のご来館をお待ちしています。
★チラシのダウンロードが可能です
・チラシ:ダウンロード
◆関連リンク
・安井息軒記念館ホームページ
・安井息軒記念館Instagram
◆開催日程 2024年1月13日(土)~3月24日(日)
◆休館日 毎週月曜(祝日の場合は開館)、祝日の翌日(土日除く)
◆開館時間 9:00~16:30(最終入館 16:30)
◆開催場所 安井息軒記念館 特別展示室
◆入館料 無料
◆主な内容
・須磨子宛て安井息軒書簡「妻の道五箇条」(安政3年/1856年)【安井紀子氏寄託】
・「湯地家宛須磨子書簡」(明治9年/1876年)【湯地貞康氏蔵】
・「如蘭叢話・後編」(大正2年/1913年)【諸岩則俊氏蔵】
・安井息軒が老中に上奏した「時勢一隅」(文久2年/1862年)【東京都立大学水野家文書】(複製)
・安井息軒記念館所蔵マイクロフィルム「時務一隅」【近代写/慶応大学斯道文庫】(複製)など
◆講座「安井息軒の育児論と教育論」
・日時…2月3日(土)10:00~11:45
・場所…安井息軒記念館 研修室
・講師…青山 大介 氏(安井息軒記念館 学芸員)
※定員40名/参加無料/要事前申込
◆展示解説講座
・日程…開催期間中の毎週日曜
・時間…14:30~15:00
・場所…安井息軒記念館 特別展示室
・講師…青山 大介 氏(安井息軒記念館 学芸員)
※定員無し/入場無料/事前予約不要
日程 | 2024年1月13日(土)~3月24日(日) |
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開催場所 | 安井息軒記念館 |
地図 |
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お問い合わせ |
安井息軒記念館 電話番号:0985-84-0234 |
関連ページ | 安井息軒記念館ホームページ:令和5年度企画展「息軒の娘」開幕(3月24日迄) |